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マルタに犬・猫を連れて行く:出発日から逆算する準備スケジュール

マルタへの犬・猫の持ち込みは、マイクロチップ→狂犬病ワクチン→21日待機の順番が絶対です。日本は「指定国」なので抗体検査は不要。犬だけに必要な条虫駆虫の24〜120時間ルールと、日本帰国時の180日待機まで解説します。

文:Ken(セントポールズベイ在住)公開日: 2026年7月17日

マルタに犬・猫を連れて行くときの順番。マイクロチップが先、次に狂犬病ワクチン、そこから21日待機、犬だけ到着の24〜120時間前に条虫の駆虫、出発前にオンラインで事前届出。

マルタのペット持ち込みルールは、複雑ではありません。ただし順番が絶対です。そして最初の一手は、渡航のおよそ5週間前に来ます。

マイクロチップ、そのあとに狂犬病ワクチン、そこから21日待機。犬だけは、到着の24〜120時間前に条虫の駆虫。最後に、出発前のオンライン届出。順番を間違えたとき、書類でリカバリーする方法はありません。やり直しです。

この記事は、引っ越しではなく「長期滞在」を想定しています。数週間から数か月、連れて行って、また一緒に帰ってくる。そういう滞在です。

そして日本の飼い主さんにとって、本当に大変なのは行きではありません。帰りです。その話は後半にまとめました。

この記事の要点

  • 最低5週間は見てください。 マイクロチップ → 狂犬病ワクチン → 21日待機、の順です。
  • マイクロチップが先。 チップを入れる前に打った狂犬病ワクチンは、EUのルール上「なかったこと」になります。打ち直しです。
  • 21日は下限であって、答えではありません。 ワクチンによっては製造元が30日と指定しています。その場合は30日が優先されます。
  • 条虫の駆虫は犬だけ。到着の24〜120時間前。 猫とフェレットは対象外です。ヨーロッパでこれを求めるのは4か所しかなく、マルタはその1つ。
  • 事前届出(Pets Arrival Notification)はオンラインで、出発前に。 マルタ政府のservizz.gov.mtにはこう書かれています。「届出がなければ、ペットのマルタ入国は拒否されます」。
  • 日本は「指定国(listed country)」です。 つまり狂犬病の抗体検査は不要。21日待つだけで入れます。
  • 一律の検疫はありません。 書類が揃っていれば、空港からそのまま一緒に出られます。

出発日から逆算するスケジュール

どれくらい前に やること 対象
5週間以上前 ISO規格(15桁)のマイクロチップを装着 犬・猫・フェレット
その日以降。決して前ではなく 狂犬病ワクチン1回目(生後12週齢以上) すべて
ワクチンから21日後 マルタに入国できる最短日 すべて
到着の10日前以内 政府機関発行の健康証明書 EU域外のみ
到着の24〜120時間前 条虫の駆虫。獣医が実施と同時に記載 犬のみ
出発前 事前届出をオンラインで提出し、印刷して携帯 すべて

5週間は「目標」ではなく「下限」です。動物病院の予約は取れないこともありますし、条虫の駆虫は5日間しかない窓に日曜日が重なることもあります。6〜8週間あれば余裕を持って動けます。5週間を切ると、運任せになります。

マイクロチップ、ワクチン、21日待機

順番がすべてです。

獣医師はISO規格(11784および11785)に適合した15桁のマイクロチップを装着し、狂犬病ワクチンを打つ前に必ずそれを読み取ります。チップが入っていない状態で打ったワクチンは、書類の不備ではありません。EUから見れば「打っていない」のと同じです。もう一度打つことになります。

そのあとの待機期間について、多くの記事が少しだけ間違っています。正しくは「21日以上、またはワクチンの製造元が定める免疫期間のうち、長いほう」。30日と指定している製品もあります。どのワクチンを使うのか獣医師に確認して、証明書に有効期間(いつから有効か)を書いてもらってください。その「有効開始日」より前には入国できません。

長期滞在の方には、もう1つ大事な区別があります。マイクロチップ装着後の1回目は「初回接種(primary)」で、これが21日待機の対象。前回の有効期間が切れる前に打つ「追加接種(booster)」なら、待機は不要で、すぐに移動できます。

問題は、切らしたときです。1日でも有効期間が切れると、次の接種はまた「初回接種」扱いになり、21日がリセットされます。滞在中にワクチンの有効期限が来る場合は、切れる前に追加接種を。うっかり切らすのがいちばん高くつきますし、たいていの人が想定していない落とし穴です。

なお、子犬・子猫は生後12週齢になるまで狂犬病ワクチンを打てません。ですから現実的な最短の渡航月齢は15週齢です。

条虫の駆虫は犬だけ。しかもマルタは4か所のうちの1つ

この工程は、よその国ではまず出てこないので見落とされます。

犬の入国前にエキノコックス(Echinococcus multilocularis)の駆虫を求めるのは、ヨーロッパで4か所だけ。フィンランド、マルタ、アイルランド(北アイルランドを含む)、ノルウェーです。この寄生虫がいない地域で、これからもいない状態を保ちたいから、というのが理由です。

押さえるべきは3点。

  • 犬だけです。 猫とフェレットは対象外。猫を連れて行く方は、この章は丸ごと読み飛ばして構いません。
  • 到着予定時刻の24〜120時間前。 出発の前ではなく、到着の前を基準に数えます。出発国の獣医師が実施し、実施したその場でパスポートか証明書に記載します。前もって書いておくことはできません。
  • 薬はエキノコックス用でなければなりません。 一般的にはプラジクアンテル(praziquantel)が使われます。市販の駆虫薬とは別物です。

フィンランド、アイルランド、北アイルランド、ノルウェーから直行で来る犬は免除されます。それ以外は、EU域内からでも必要です。

入国拒否につながる、あの届出

事前届出(Pets Arrival Notification)はオンラインの書式で、servizz.gov.mtから入り、nldmalta.gov.mtのポータルで提出します。いちばん手間のかからない工程で、いちばん結果が重い工程でもあります。servizz.gov.mtの表現に、遠慮はありません。「届出がなければ、ペットのマルタ入国は拒否されます」。

必ず印刷してください。移動中は控えを携帯するようにと明記されていますし、航空会社のカウンターで提示を求められることもあります。

締切は、政府のページに書かれていません。拒否という結果の重さを考えると、なかなか不親切です。ただ、代わりに載っているものがあります。このサービス自体の処理スケジュールで、審査・査定・承認・交付の4段階が、それぞれ1日ずつ。これが実質的な答えでしょう。渡航の1週間ほど前には出しておく。前日は、計画とは呼べません。

「指定国リスト」に入っていない国から行く場合

EUは、抗体検査を免除する国のリストを持っています。想像より長いリストです。日本、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、スイス、香港、シンガポール、ほか40か国ほど。ここに入っていれば、待機は21日だけで終わります。

日本は入っています。ですので、以下は日本から行く方には関係ありません(第三国に住んでいる方のために残しておきます)。

  1. マイクロチップ、そのあと狂犬病ワクチン。
  2. ワクチンから30日以上あけて採血し、狂犬病の抗体価を測る。結果は0.5IU/ml以上であること。
  3. 採血日から3か月待機。 ワクチンの日からでも、検査結果の日からでもありません。ここを読み違えて3か月を失う人がいます。

リストにない国からだと、5週間ではなく、およそ4か月かかる計算になります。

なお、書類の根拠法は今年、番号が変わりました。親法である規則(EU) 576/2013はそのままですが、国リストは委任規則(EU) 2026/131に移り、2026年4月22日から適用されています。もし読んでいるページが「規則577/2013」を引用していたら、それは古い情報です。証明書の書式も、米国APHISによれば2026年10月1日に切り替わる予定ですが、この点をマルタ側が公表しているわけではありません。その前後に渡航する方は、どちらの書式が有効か獣医師に確認してください。

書類が足りないまま着いてしまったら

通常の検疫はありません。書類が揃っていれば、診察を受けて、そのまま一緒に空港を出られます。

足りなかった場合、servizz.gov.mtが挙げている結末は2つで、どちらも罰金ではありません。「出発国に送り返されるか、検疫に留め置かれるか」。検疫は問題が解消するまで続きます。もし足りないものが狂犬病ワクチンだったら、「解消する」とはワクチン+21日待機のこと。その間ずっと、預かり費用は飼い主負担です。

この記事の本当のコストは、そこにあります。罰金ではありません。一度は待ったはずの時計をもう一度回しながら、日割りの請求書が積み上がっていく、という話です。

「3,700ユーロの罰金」について。 よく見かける数字で、出どころは1つの移住系ブログです。マルタの法律の中を探しましたが、見つかりませんでした。ペットの持ち込みを所管するのは獣医サービス法(Cap. 437)で、その罰則からこの金額は出てきません。裏の取れない数字は書きません。政府自身の言葉で確認できる結末は、入国拒否か、自己負担の検疫。届出を出す理由としては、それで十分だと思います。

準備中の実務的な話を2つ。マルタの獣医師は英語で対応してくれるので、こちら側の手続きで言葉に困ることはありません(マルタと英語の話はこちら)。ただし滞在先が動物を受け入れるかどうかは、予約前に必ず確認を。ホームステイかアパートかで迷っている方は、そこが判断材料の1つになります。長期の滞在なら、現地での移動手段もあわせて考えておくと動きやすいはずです。

日本に帰るときのほうが、実は大変です

ここからが本題かもしれません。

行きは、日本が「指定国」なので楽なほうです。難しいのは帰りで、しかもその準備は、日本を出る前に済ませておかないといけません

マルタは、日本が定める「指定地域」(アイスランド、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー、ハワイ、グアムの6つ)に入っていません。ですから帰国時は「指定地域以外」の手続きになります。動物検疫所が求めるのは、次の流れです。

  • マイクロチップ装着。
  • 狂犬病ワクチンを2回以上。1回目は生後91日齢以降かつチップ装着後、2回目は1回目から30日以上あけて、かつ1回目の有効免疫期間内に。
  • 2回目のあとに採血し、農林水産大臣の指定検査施設で抗体価検査。0.5IU/ml以上。この結果は採血日から2年間有効です。
  • 採血日を0日目として、180日以上待機してから日本に到着すること。
  • 到着予定日の40日前までに、到着空港を管轄する動物検疫所へ輸入届出。

ここが分かれ道です。この一式を日本を出る前に終えておけば、帰国時の係留は12時間以内で済みます。 逆に、マルタに着いてから抗体検査を受けると、その採血日から180日の待機がマルタで始まります。3か月の滞在予定が、半年になる計算です。

もう1つ、見落としがちな点。滞在中に狂犬病ワクチンの有効免疫期間が切れると、2回の接種と抗体検査をやり直したうえで、180日の待機がかかります。長期滞在なら、出発前に有効期限を必ず確認してください。

日本出国時にも動物検疫所の輸出検査と輸出検疫証明書が必要で、EU向けは獣医師家畜防疫官の署名が要るため、検査希望日の14日前までに申請と予約が必要です。マルタ出発前には、出国前10日以内の臨床検査と、マルタ政府機関(AHWD)発行の証明書も要ります。

手順の詳細と最新の様式は、動物検疫所のページでご確認ください。犬、猫の日本への入国(指定地域以外編)犬、猫の旅行・短期滞在編の2ページが該当します。ご自身のケースについては、到着予定空港を管轄する動物検疫所に直接確認するのがいちばん確実です。

行きの準備が5週間。帰りの準備は、日本を出る前から始まっています。

よくある質問

マルタに犬を連れて行くとき、狂犬病ワクチンはいつまでに打てばいいですか?

到着の21日以上前です。ただしその前にマイクロチップが入っていることが条件になります。ワクチンの免疫期間もご確認ください。製造元が30日と定めている製品なら、そちらが優先されます。証明書に「有効開始日」を記載してもらってください。有効期間内の追加接種であれば、待機は不要です。

マルタでペットは検疫に入れられますか?

書類が揃っていれば、入りません。マルタには、条件を満たした犬・猫に対する通常の検疫はありません。検疫になるのは要件を満たさなかった場合だけです。servizz.gov.mtは「出発国に送り返されるか、検疫に留め置かれる」としています。費用はいずれも飼い主負担で、問題が解消するまで続きます。

条虫の駆虫は、いつやればいいですか?

到着予定時刻の24〜120時間前、つまり1〜5日前です。対象は犬だけで、猫は不要です。薬はエキノコックス(*Echinococcus multilocularis*)に対応したものである必要があり、獣医師が実施と同時に証明書へ記載します。この要件があるのはヨーロッパでマルタ、フィンランド、アイルランド、ノルウェーの4か所だけです。

日本はEUの「指定国」ですか?

はい。日本は欧州委員会の現行リストに掲載されています(委任規則(EU) 2026/131)。ですから日本からマルタへ行く場合、狂犬病の抗体検査も3か月待機も不要です。マイクロチップ、狂犬病ワクチン、21日待機、健康証明書という標準ルートで入国できます。

マルタから日本に帰るときは、何が必要ですか?

マルタは日本の「指定地域」ではないので、抗体検査と、採血日から180日以上の待機が必要です。これを日本出国前に済ませておけば、帰国時の係留は12時間以内で終わります。到着の40日前までに動物検疫所への輸入届出も必要です。詳細と最新の様式は、動物検疫所にご確認ください。 ---